2009.06.05
「里山」は集落をとりまく二次林を中心とした森林が広がる地域です。里山とそれに混在する農地、ため池、草原等で構成される「里地里山」は、都市域と原生的自然との間に位置し、様々な人間の働きかけを通じて環境が形成されてきた地域であり、特有の多様な生物の生息環境を提供しています。
また、薪炭林や農用林などの二次林、採草地などの二次草原は、以前は経済活動に必要なものとして維持されてきました。こうした人の手が加えられた地域は、その環境に特有の多様な生物をはぐくんできました。
しかし、特に人口減少や高齢化が進み、農業形態や生活様式の変化が著しい里地里山では、人間活動が縮小することによる危機が継続・拡大しています。さまざまな形での人間による攪乱の度合いによりモザイク状に入り組んでいた生態系が、攪乱を受けなくなることで多様性を失ってきており、里地里山に生息・生育してきた動植物が絶滅危惧種として数多く選定されています。
このような状況を受け、平成19年11月に閣議決定した「第三次生物多様性国家戦略」では生物多様性の3つの危機の1つに里地里山の危機が位置づけられました。
我が国の国土のおよそ4割を占める里地里山は、農林業などの長年にわたる人間の働きかけを通じて、特有の自然環境が形成され、絶滅危惧種をはじめとする多くの野生生物が生息・生育する生物多様性の保全上重要な地域です。
なお、里地里山と希少種の集中分布域の重複状況を見ると、環境省レッドデータブックに掲載されている種のうち、植物種5種以上かつ動物種5種以上が生息・生育している地域の5割以上が里地里山と重複しています。
農村社会をとりまく農地や森林など二次的な自然環境において、持続可能な自然資源利用を行うことは生物多様性保全の観点から重要です。2010年に名古屋市で開催予定の生物多様性条約第10回締約国会議(COP10)では、「生物多様性の持続可能な利用」が重要な課題の一つとなる見込みです。
平成20年5月に神戸で開催されたG8環境大臣会合では「SATOYAMAイニシアティブ」の国際的な推進が合意され、生物多様性条約COP9ではその促進を国際社会に表明し、本年4月にイタリアで開催されたG8環境大臣会合でもシラクサ宣言に盛り込まれたところです。
COP10では、里地里山に見られる智恵や伝統など世界各地域の自然共生の事例をもとに、二次的な自然資源管理の考え方や具体的な方法を整理し、自然資源管理の国際モデルとして「SATOYAMAイニシアティブ」を世界に提案したいと考えています。
Written by 鬼塚淳一(環境省 自然環境局 自然環境計画)