ビジネスと生物多様性

生物多様性とビジネスの関係 ‐ 南アフリカの事例から

2010.04.21

2010年は、国際生物多様性年だ。生物多様性を保全することとは、単に、危機にさらされている珍しい写真写りの良い種を保護する事だけでなく、我々を支えている複雑な生態系を維持する事である。生物多様性が危うい状況になれば、多くのビジネスが厳しい経済状況と自然資源を持続的に使用する上でのリスクを抱えることに直面する。

生物多様性とは?また、地球の生き物を支える上でどんな役割を持っているのか。

カバを囲むフラミンゴの群れ(アフリカ・ケニア)

カバを囲むフラミンゴの群れ(アフリカ・ケニア)
Photo:©Art Wolfe / www.artwolfe.com

生物多様性 (Biodiversityという英語は、Biological(生物的な)とDiversity(多様性)を組み合わせたもの)は、生命の多様性 (バクテリア、菌類、植物、昆虫、哺乳類 など) と、それを支える生態的な一連の作用 (水の供給と浄化、栄養素の循環、土壌の肥沃化を維持する為の炭素と窒素の固定, 受粉と有益な捕食など)を指している。生物多様性が損なわれていない場合、生態系は回復力を保ち、地球規模の気候変動を含む環境の変化に適応することが出来る。

例えば、湿地の植物種は川の中の沈殿物、栄養素、有毒物の濾過装置の役割をしている。もし、1つまたは2つの種が消えてしまっただけなら、生態システムは崩壊しないで済むかもしれないが、もし、ある、決定的な数の種が取り除かれてしまったら( 我々は手遅れになるまで、その数に気付かない) 、その機能は失われてしまう。そして、湿地帯の機能は妨げられ、余分な栄養素は外来種の植物の成長を促進させ、動物や人間の飲み水は、有毒物によって汚染され飲めなくなってしまうだろう。

どのような活動や出来事が生物多様性を脅かしているのか?

生物多様性にとって最も大きな脅威は、生息地の消失や変化(農業や都市開発によるもの)である。招かれざる外来侵入植物種、農業や工業などの産業から流れ出た汚染物や栄養素、自然資源の過剰搾取、そして気候変動。このような活動の多くは我々人間の数そのものの問題だけでなく、特に、20世紀前の産業革命と、肥料の出現による収穫量増加をもたらした、緑の革命以降の人類の生活様式にも原因がある。

生物多様性は、経済にとってどのくらい重要なのか?

フィンボスの花

フィンボスの花
Photo:©CI by Haroldo Castro

生物多様性と、それに関連する過程なくしては、経済活動はありえないであろう。生物多様性と生態系は、直接的利益 (エコシステム・グッズと呼ばれる) と間接的利益 (エコシステム・サービスと呼ばれる)を供給してくれている。さらに、生物多様性を戦略的に広告やマーケットアクセスに使用しているビジネスもある。

エコシステム・グッズは、シーフード、草花、ハチミツ、薬用植物、飼料・燃料用木材、材料、建築用材料、自然観光ツアー等の商品化され売られているような自然資源からなっている。 南アフリカでは、魚、エビ、貝、餌用の魚等の海洋資源は、経済に対して、13億ランド(約168億円)もの額大な貢献をしている。フィンボスという花の産業は、輸出・国内小売り合わせて、毎年1億5千万ランド(約20億円)近くを生み出している。また、ブチュは毎年1200万ランド(約1億5千万円)が輸出され、食用の香料やフレグランスとして利用されているし、また560万分ランド(約7200万円)のカヤが毎年収穫されている。

エコシステム・サービスは良く理解されていないが、全てのビジネス、そして生命にとって、きわめて重要である。エコシステム・サービスは水の浄化、湿地による洪水の緩和(現在、南アフリカの湿地の50%が失なわれてしまった)、土壌の栄養素循環、土壌の炭素貯蔵、土壌交換・浸食コントロール、鳥類・昆虫・哺乳類等による穀物の受粉、害虫のコントロールを含んでいる。

生きるために必要なものは目に見えないため、生態系サービスに値段を付ける事は単なる学問的な仕事だが、生態系サービスの重要性を例証する手段として決して無駄ではない。自然科学経済学者は、たとえば、ケープ植物地域でのエコシステム・グッズとエコシステム・サービスを含めた生物多様性の全体的な経済的価値を、1年で10億ランド(約130億円)を超えると算出している。これは、西ケープ地域全体の地域総生産(GGP)の10%を超える。

ビジネスにとっての生物多様性守るための新しいインセンティブの例:FPA(防火協会)に参加している地主に対する保険料の優遇、化石燃料から出る二酸化炭素の排出をオフセット(相殺)する企業間炭素クレジット取引、そして将来的には、地主や企業が、公共財である湿地帯の回復や外来侵入植物種の排除などに支払を行うPES(エコシステム・サービスに対する支払い)など。

生物多様性の消失によってどんな影響がビジネスにあるのか?

もしある産業がエコシステム・グッズ(海産物や穀物など)に頼っているとしたら、生物多様性の喪失によってビジネスが持続不可能になってしまう事は明らかである。一方、生物多様性と生態系に配慮しなければ、損害と高い保険料という観点から高いコストを負うという結果になる。洪水によるインフラへのダメージが、水流の増加により河川がダメージを受けてきたためだということに気がついている企業は少ないだろう。そして気候変動がこの状況を更に悪化させていくと予測されている。

どのような産業にとって、生物多様性管理を優先させる事が必要か(またそれはなぜか?)

Photo:©CI by Russell A. Mittermeier

生物多様性に直接的に頼っている産業は、限られた数しかいないのは明白だ。:農業、製薬業、織物 (綿、亜麻布、絹、羊毛、モヘア、麻、竹)、建築、(木材、竹材、わら)、芸術・工芸、エコツーリズム等である。南アフリカは、さまざまなインセンティブによって、陸上および海洋の生産において生物多様性を主流化することにおいて先導をきっている。

たとえば、持続可能なシーフードイニシアチブ(SASSI)、アナグマとハチミツ、持続可能な砂糖イニシアチブ(SSI)、生物多様性とワイン・イニシアチブ(BWI)、ルイボス生物多様性イニシアチブ(RBI)、サンドベルド生物多様性ベストプラクティス・ポテト事業(SBBPP)、花の丘保全信託(FBT)、生物多様性とシトラス・イニシアチブ(BCI)、そして、モヘア南アフリカとランドマーク基金による捕食動物に配慮した「フェアーゲーム」ベルのような様々な家畜イニシアチブもある。ブリーン・チョイスは、これらのイニシアチブのための包括的な技術・ネットワークサポートを提供している。また、下記アドレスにてこれらのイニシアチブに関する詳細な情報を提供している。
http://www.capeaction.org.za/index.php?C=bio&P=2

上記に付け加えて、全てのビジネスが、彼らのエネルギー・化学物質の使用方法と原材料の調達原則が生物多様性に与えている影響に気付く必要がある。

エネルギー・科学物質の使用方法については、我々の化石燃料への依存が、気候変動へとつながる温室効果ガス(GHG)の排出を増やし、様々な種の分布と天気システムを狂わせている。我々は主に電気を使うために化石燃料に依存しているが、化石燃料は、さらに20世紀の最も重大な発見を可能にした。

たとえば、大気中の窒素を肥料の窒素に変えるには水素ガス(化石燃料)と、凄まじい熱と圧(化石燃料を必要とする)を必要とする。現在1億トンの窒素肥料が全人口の1/3を支えている。また、これらの肥料からの亜酸化窒素は、二酸化炭素の300倍もの温室効果ガスとしての効果がある。化石燃料は、回復不可能な資源を使い果たす、除草剤、殺虫剤、化学染料を作るためにも使用され、有毒で公害を引き起こす。化石燃料は枯渇し、環境的被害、人間の健康問題と気候変動を引き起こしており、持続可能なものではない。それぞれの産業が代替エネルギー資源の選択や、電力の価格の引き上げ等、少し行動するだけで、長期的に見て最終的には利益を獲得する事に繋がるであろう。

包括的な生物多様性計画にとって重要な要素は何か?

ビジネスの為の包括的な生物多様性計画は、生物多様性のみを一般的な環境・社会・経済的な原理原則から孤立させるべきではない。包括的な生物多様性計画とは、一定の改良の為のフィードバックループとして機能する3つの反復の段階を有する。

  1. 証拠
    すべての商品の原料から処分までのライフサイクルにおいて、環境・社会・経済全てのラインパクトのデータを収集し、どの行動が一番効果的かを特定する。
  2. ステークーホルダーの参加
    サプライチェーンを通して、ステークホルダーが行動を議論し、行動におけるオーナーシップに賛成する。
  3. 行動計画
    環境的・社会的な行動を改善する為の実用的な解決手段を実行し、良い事例として誌上での理解の促進を広める事

この過程のひとつの例証は、デフラ・クロージング・ロードマップをご覧下さい。

ステップ1&2が終了したら、下記に従って行動計画(Action Plan)を行います。

  1. 供給チェーン全体で環境行動を改善する
       a. 更に持続可能な仕組み
       b. 持続可能な物質
       c. 最大限の再利用とリサイクル、処分物マネジメント
       d. 再生可能なエネルギー資源の利用
       e. 健康と環境に害のある化学物質の利用の最小限化
  2. 消費動向とその行動への影響
       a. 幅広い環境にやさしい商品の提案
       b. エネルギーの効率的な使用について消費者に伝える。(例えば、製品の清掃やリサイクル)
  3. 自覚・メディア・教育・ネットワーク
  4. 丈夫で長持ちするような衣服のためのマーケットドライバの作成
  5. サプライチェーンでのトレーサビリティーを改善する手段

南アフリカのビジネス調達戦略において、生物多様性はどのような役割を担うべきか?

企業は、製品を作る上で環境に配慮するべきである。現在、生物多様性や環境を考えたラベル制度が数多くある。倫理的調達原理を持っている企業は、これらのラベルを使用している:

SASSI

SASSI (マーク掲載) 
Badger Friendly Biodiversity and Wine Initiative
Flower Valley Conservation Trust

他に、レイン・フォレスト・アライアンスと、Utzの認証がある。

エコサートや、他のオーガニックラベル、グローバルギャップ、UN コンパクト、フェアトレードと倫理に配慮した紅茶パートナーシップなどのラベルは、農業資源の保護と、農業のグッド・プラクティス促進の原則を含むものだが、生物多様性に直接関係あるような原理を含んでいる必要はない。
より詳しく知りたい方は、こちらをご覧ください。
http://www.capeaction.org.za/index.php?C=bio&P=2

Heidi-Jayne Hawkins(グリーン・チョイス コーディネーター)
CI南アフリカ、WWFグリーン・トラスト、グリーンチョイス
翻訳:市川 寛