貧困・開発と保全

貧困・開発と保全

2010.02.16

生物多様性の喪失は、貧困・開発の問題とリンクしている

生物多様性の喪失は、貧困・開発の問題とリンクしている Photo:©CI ジャパン

地球規模で見た場合、保全の重要性が高い地域の多くは途上国にあります。そうした地域では、雇用を生み出すような産業が発達していないため、生物資源を採取・捕獲し、先進国に輸出することで、生計を成り立たせていることが少なくありません。

ここでいう生物資源とは、熱帯林であったり、薬草であったり、魚介類であったりとさまざまです。あるいは、綿花やエビなどのように人により栽培、養殖されたものも含まれるでしょう。

近年のライフスタイルの変化や人口増加にともなって、先進国や新興国で需要が高まり、途上国における生物資源は採取過剰や乱獲気味になっています。生物資源が再生産されるスピードを超えて消費が進むとき、資源量は低下していきます。

森林でいえば、5年で日本列島の面積に相当する森林が消失していると言われます。残された土地は農地に転換されて、プランテーションという名の単一作物を栽培する農園に替わります。コーヒー、アブラヤシ、サトウキビなどが、現地の安価な労働力を利用して、生産されるのです。

また、エビの養殖のために、東南アジアのマングローブ林が大規模に切り開かれ、養殖池に姿を変えています。魚介類の養殖に際しては、病気の蔓延を防ぐために、薬品類が投与されることがあります。

こうして、途上国の豊かな森が失われ、命を育む沿岸域の力が衰えていきます。すなわち、生物の多様性が失われていくのです。

プランテーションの農園は天候不順への適応力にすぐれず、経済的な打撃を受けやすい構造を持っています。マングローブ林を失った沿岸域は、津波などの自然災害に対して脆弱です。

つまり、生物多様性の喪失という環境問題が、貧困・開発の問題とリンクしている現実があります。

2015年までに達成すべきこととして国際目標になっている「ミレニアム開発目標」は、平和と安全、開発と貧困、環境、人権などを包括的に扱っています。その7つめの目標に、「環境の持続可能性の確保」が掲げられています。貧困層の生活改善と環境の持続可能性を同時に達成しようとする意図があります。

生物多様性を多角的に見ることで、関連するさまざまな事象を総合的に捉えた取り組みが求められていると言えるでしょう。

Written by Hisashi Okura