海洋と生物多様性

海をめぐる日本人のこれまでとこれから

2009.05.08

海をめぐる日本人のこれまでとこれから

Photo:©Charlotte Boyd

日本の国土は世界で60番目に当たるそうで、本当に小さな、島々からなる国です。 それが、国連海洋法条約により(1994年発効日本は1996年批准)、周辺200海里の広い海が日本の排他的経済水域となりました。この広さは世界で6番目です。

日本は古くから魚を良く食べる国でしたから、この海域も、それまでの漁業活動の広がりと同じように、漁業活動をするところという認識が強かったのではないか、と思います。排他的経済水域に属する海洋全体を、どのように責任を持って管理するかというもう一つの課題はあまり熱心に検討されてきませんでした。

沿岸・海洋を管轄する省庁も、国交省や水産庁、環境省などそれぞれの縄張りの中で管理を考えてきたため、海洋を統合的に考えるというシステムも存在しなかったということも理由の一つではあるでしょう。

しかし、沿岸の開発や資源管理の不十分さゆえに漁業資源は減少し、海洋汚染も進行しているという事実に反対する人もいないのではないかと思います。海洋環境の悪化は、そこにすむ生物のみならず、食料資源をはじめ、気候の変化、自然災害など私たちの生活環境に大きな影響をもたらします。

一方、国際的にはどうかというと、海洋についての知識が増すと同時に、海洋環境を保全しようという動きが活発化してきて、海洋に関連する国内法の整備や資源管理、海洋保護区の設置などの保全活動も積極的に行われてきました。

そうした中で、海洋をもっときちんと管理しなければならないという声が上がり、2007年に内閣府のもとに「海洋基本法」が出来ました。

これが成立したのは、たまたま起きた近隣諸国との領海問題と海底に埋蔵されている可能性のあるエネルギー開発が引き金となったからで、必ずしも海洋環境全体の管理を目指したものではありません。 しかし、さすがに、開発のみではすまされない情勢から、「海洋の平和的かつ積極的な開発及び利用と海洋環境の保全との調査(第1条目的)」と記述されました(積極的な開発及び利用と海洋環境は調和するのか?という疑問があるにせよ)。
そして、附帯決議に海洋保護区の設置がかろうじて書き加えられたことにより、それまで及び腰であった各省庁がそれぞれ、それに向けて動き出さざるを得ない状況が生まれました。

私たち、海洋環境政策ネットワークはこうした状況のもと、ともすると開発・利用が先行する政府・関連産業への懸念から、海洋環境の保全を政策にもっと盛り込むべきと考えて集まった人々や団体のネットワークです。

これまで沿岸・海洋環境の保全に向け、まずは「日本型海洋保護区のあり方検討」で足踏みをしている政府に対して、海洋保護区の設置を前に進めようと専門家を招き、学習会を重ねています。

基本法成立とは関係なく、いわゆる海のホットスポットと考えられるいくつかの海域では今も開発や過度の利用が行われていますし、水産資源の管理という面でも、まだまだ問題があります。開発を食い止め、資源管理を実効性のあるものにするため、海洋保護区はたいへんよいツールになると私たちは考えています。

回を重ねる中で、海洋環境保全への多くの方の参加を願い、日本列島をめぐる海のホットスポットをさまざまな現場の方々の声で紹介し、どうすればよいか、何ができるか、ともに考えていきたいと思いますのでよろしくお願いします。

Written by 倉澤七生

倉澤七生(くらさわななみ)

イルカ&クジラ・アクション・ネットワーク事務局長
1987年ー1993年エコロジーの雑誌「オイコス」を編集・発行し、環境と開発、人権、食の問題、女性問題などのネットワーク作りを目指し、さまざまな団体の取材を通じて情報を発信してきた。1999年7月にWWF草刈秀紀氏らとともに、野生生物の包括的な保護制度の確立を目指し、「野生生物保護法制定をめざす全国ネットワーク」を組織し、そのなかで主に海洋と海生生物問題を担当。海洋基本法の制定の際にできた市民の意見を反映させるための活動を発展・継続させるための「海洋環境政策ネットワーク」の参加。小林幸治氏とともに事務局を務めている。