象徴種(フラッグシップ・スピーシーズ)

象徴種(フラッグシップ・スピーシーズ)

Photo:©Olivier Langrand

その種の保全が自然環境の保全をアピールすることにつながる種を、象徴種またはフラッグシップ・スピーシーズと呼びます。ジャパン・ホットスポットの象徴種には、海外でもよく知られている種もいます。

シラネアオイ

Photo:©Natural Parks Foundation

シラネアオイ【シラネアオイ科シラネアオイ属】

日本の植物相には稀少な固有植物が数多く見られ、これらの植物は、日本や世界の温暖な地域で園芸用として人気があり、よく知られています。シラネアオイはおそらく最も広範囲に分布しており、本州中部から北海道南部にかけて分布しています。

中でも本州の日本海側に多く自生し、青紫色の大きな花を咲かせ、まれに白い花を咲かせることもあり、園芸用として好まれています。深い雪の合い間から顔をのぞかせているその姿はとりわけ目を引きます。

コウヤマキ

Photo:©Fumio Matsui

コウヤマキ【コウヤマキ科コウヤマキ属】

コウヤマキは針葉樹で、本州中部から四国、九州にかけて分布します。針状の葉がぴったりと2枚重なり合って1枚の葉を成し、枝の先端近くに渦巻き状に花を咲かせます。見事なコウヤマキの群生が、和歌山県の高野山に見られます。

コウヤマキは、九州、四国、本州の紀伊半島に分布する襲速紀(そはやき)という植物区系に属しています。日本固有の植物ですが、襲速紀区系の植物の中には、中国西部に近縁種が見られるものもあります。

ウラハグサ【イネ科ウラハグサ属】

かなり稀少で、東海地方の湿った岩場など特定の場所にしか生育しません。ときにまだら模様になる葉は、しなやかにアーチ状に広がる習性を持ち、密集しこんもりとまとまる性質があることなどから、鉢植えや庭植えとして人気があります。

トガクシショウマ【メギ科トガクシショウマ属】

稀少で、本州の中部から北部にかけての山岳地帯でしか見られません。この種は薄紫色の花が特に印象的です。

ニホンザル【オナガザル科マカク属

生物多様性ホットスポットである日本で最もよく知られている象徴種です。ニホンザルはヒトを除く霊長類の中で最も北に生息し、本州、四国、九州およびいくつかの島々に分布しています。

ニホンザルは日本の文化において重要な役割を担っています。冬には雪の中をはしゃぎ回り、日本に豊富にある温泉に浸かっているその姿は「雪ザル」として世界中で有名です。 ニホンザルは霊長類科学の発展においても、とても重要な存在でした。1950年代には、日本の研究者らが、野生霊長類の実地調査を他に先駆けて初めて実施しました。

ヤクシマザル

Photo:©Takashi Nishikawa

ヤクシマザル【オナガザル科】

ニホンザルの亜種で、屋久島にだけ生息しています。

イリオモテヤマネコ【ネコ科ネコ属】
学名:Prionailurus iriomotensis

西表島にのみ生息します。1967年に新種として報告され、アジア地域のネコ科で最も原始的なものの1つとして注目を集めました。その後の研究によって、ベンガルヤマネコの亜種の可能性が示唆されています。

イリオモテヤマネコはわずか100頭ほどしか生息していないと考えられています。

アマミノクロウサギ
【ウサギ科アマミノクロウサギ属】

アマミノクロウサギは、2琉球列島にはほかにも固有種がいます。20世紀初頭の個体数の激減によって国の天然記念物に指定され、徹底した法律上の保護が与えられている種ですが、その生息地の保護は行われていないのが現状です。

アマミノクロウサギの生息地は、老齢林(奄美諸島の10%、徳之島の30%を占めている)の寸断など、広い範囲にわたって破壊され、さらに移入種のマングースも大きな脅威となっています。アマミノクロウサギは2,500頭くらいしか生息していないのではないかと推測されています。

オオサンショウウオ
【サンショウウオ科オオサンショウウオ属】

オオサンショウウオは本州西部、四国、九州に分布し、世界最大級の両生類です。このたぐいまれなオオサンショウウオは、幼生から成体になるまで5年を要し、体長が1メートルを超えるまでに成長する場合があります。魚や甲殻類をエサとしています。

     

過去に人間が食用としていたために減少し、1951年に保護下に置かれました。現在の日本人にオオサンショウウオを食べる習慣はないので、オオサンショウウオの個体数は増え、国の特別天然記念物に指定されています。

イボイモリ【イボイモリ属 絶滅危惧ⅠB類】

ワニのような特徴を持つイボイモリは、奄美大島、徳之島、与路島、沖縄本島、瀬底島(せそこじま)、渡嘉敷島(とかしきじま)の6島に分布しています。イボイモリは沖縄県と鹿児島県の天然記念物に指定されています。

ノグチゲラ

Photo:©Yuji Obara

ノグチゲラ【キツツキ目キツツキ科】

ヤンバルはノグチゲラのすみかにもなっており、西銘岳(にしめだけ)と伊湯岳(いゆだけ)に挟まれた尾根沿いが主な繁殖地となっています。

ノグチゲラは1930年代には、近い将来絶滅の危険性が極めて高いと考えられていました。1990年代初頭の繁殖個体数はわずか75羽と推定されていましたが、現在は146~584羽となっています。

   

ヤンバルクイナ
【ツル目クイナ科 絶滅危惧ⅠB類】

鳥類の最も代表的な象徴種であるヤンバルクイナは沖縄本島の固有種で、島の北部の1/4を占めるヤンバルにしか生息していません。個体数はおよそ900つがい、または1,500~2,100羽と推定されています。

タンチョウ

Photo:©Olivier Langrand

タンチョウ【ツル科ツル属 絶滅危惧ⅠB類】
ナベヅル【ツル目ツル科 絶滅危惧Ⅱ類】
マナヅル【ツル目ツル科 絶滅危惧Ⅱ類】

日本にはとても貴重な水鳥が何種かいます。特に、北海道に生息するタンチョウ、九州の出水(いずみ)地方に越冬のため飛来するナベヅルやマナヅルなどです。ナベヅルの全世界個体数の約85%、マナヅルの約40%が、越冬のため出水地方に飛来します。

不自然なまでに極端に一カ所に集中している主な理由は、エサです。出水地方には自然の生息地や十分なエサ場はもはや存在しないので、ツル類の生存は日本政府の支援による集中的な管理に負うところが大きいのです。

このように越冬地が極端に集中していることは、病気やほかの大災害によって個体数が減少する危険性が高くなります。

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