美と自然

≪フォトエッセイ≫第1回:亜熱帯の森が覆う生き物の宝庫・西表島 ‐ vol.3

2010.06.17

私の感じている生物多様性の世界-フォトグラファー・佐藤岳彦

Photo:©Takehiko Sato

皆さんは生物多様性をどんな時に、どのように感じているだろうか。身近な食や医薬品、散歩で出会うちょっとした自然、文化、科学、経済などを通じその感じ方は様々だと思う。ここでは、生き物を追いかけ野山を駆け回るフォトグラファー・佐藤岳彦の感じた生物多様性の世界を、フィールドからのつぶやきとともに紹介したい。生き物たちの織り成す色や形、表情、生態などに少しでも触れていただければ幸いである。そんな第1回目はイリオモテヤマネコで有名な西表島が舞台だ。

「 威嚇 」

ヤエヤマヒバァ

Photo:©Takehiko Sato

ヤエヤマヒバァAmphiesma ishigakienseの威嚇。その色合いとしなやかで勇ましい姿には惚れ惚れしてしまう。そんな本種は前出のイワサキセダカヘビやコガタハナサキガエル同様、西表島と石垣島の固有種だ。

「 葉上の宝石 」

 イヌビワオオハマキモドキ

Photo:©Takehiko Sato

イヌビワオオハマキモドキSaptha divitiosaは前翅長が8mmほどの蛾の仲間。葉上で輝く翅はまるで小さな宝石のようだ。脚には縞々の靴下、触覚にはワンポイントで白を配し、その美しさに抜かりはない。

「 アイフィン 」

 アイフィン

Photo:©Takehiko Sato

夜の森には様々な声が響き渡る。「ピッ..ピッ..ピッ...」と、歯切れ良くも優しいホイッスルのような声はアイフィンガーガエルChirixalus eiffingeriのものだ。このカエルは子育てをすることでも知られ、母親は樹洞などに溜まった水に卵を産み、孵化したオタマジャクシの餌として無精卵を産み与えに通ってくる。

「 森の漆器 」

ヤエヤママルヤスデ

Photo:©Takehiko Sato

10cmもの大きさになるヤエヤママルヤスデSpirobolus sp.。表面は漆塗りのように艶やかで、触ると妙に心地がよい。持てばちょっとしたズッシリ感を味わえるが、刺激しすぎると体液を出すので注意が必要だ。

「 蛇の名前 」

サキシマバイカダ

Photo:©Takehiko Sato

濡れた落葉で喉を潤すサキシマバイカダLycodon ruhstrati multifasciatus。バイカダを漢字で書くと「梅花蛇」となるわけだが、何とも趣のある名前である。蛇の名前にはヒバァ、ハイ、ヒャン、アカマタ、ヒバカリ、スジオなどと一見得体の知れないものも多いが、響きや由来が面白く興味は尽きない。

「 輝く蛹の話 」

マルバネルリマダラ

Photo:©Takehiko Sato

そのメタリックな表面に、西表の自然を映すマルバネルリマダラEuploea euniceの蛹。もちろん、カメラを構え、赤いザックを背負った小汚い私も映しこまれている。  沖縄の島々には、台湾や東南アジアなどから風に運ばれ異国の蝶がやってくる。そんな蝶たちは「迷蝶」と呼ばれ、本種もその類だったりする。ある日、海を渡った母蝶はこの新天地へと辿り着き、幼虫が食べられる植物を見つけ卵を産んだ。幼虫は無事に育ち、やがて蛹となって輝き始める。そんな時に私が現れシャッターを切ったのだ。

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佐藤岳彦

佐藤岳彦(さとうたけひこ)

仙台市出身。生物多様性の織り成す世界に魅せられ、大学院で生物学を学びながら、写真を撮りつづけている。日本各地や海外を旅し、生き物を追いかけ、見つめ、その表現を常に模索している。