美と自然

≪フォトエッセイ≫第1回:亜熱帯の森が覆う生き物の宝庫・西表島 ‐ vol.1

2010.05.20

私の感じている生物多様性の世界-フォトグラファー・佐藤岳彦

Photo:©Takehiko Sato

皆さんは生物多様性をどんな時に、どのように感じているだろうか。身近な食や医薬品、散歩で出会うちょっとした自然、文化、科学、経済などを通じその感じ方は様々だと思う。ここでは、生き物を追いかけ野山を駆け回るフォトグラファー・佐藤岳彦の感じた生物多様性の世界を、フィールドからのつぶやきとともに紹介したい。生き物たちの織り成す色や形、表情、生態などに少しでも触れていただければ幸いである。そんな第1回目はイリオモテヤマネコで有名な西表島が舞台だ。

「 ハエの顔に想う・・・ 」

ヒメシュモクバエ

Photo:©Takehiko Sato

西表の鬱蒼とした森に分け入り、沢のほとりで一休み。ふと、足元のハエが気になりよくよく見つめてみると、その顔の珍奇な様に思わず唸ってしまった。そんなヒメシュモクバエSphyracephala detrahens との睨めっこ。私は自然の奥深さを感じずにはいられなかった。

「 緑が覆う島 」

西表島

Photo:©Takehiko Sato

西表島は台湾の東約200km、沖縄島の南西約400kmに位置し、石垣島などとともに八重山諸島を構成する島々の一つである。島の90%は緑で覆われており、河口にはマングローブ、陸域には亜熱帯植物で構成された深い森と山が続く。

「 左右非対称の蛇 」

イワサキセダカヘビ

Photo:©Takehiko Sato

怪しげな表情で私をチクチクと刺激してくるのは、カタツムリ食いの珍蛇イワサキセダカヘビPareas iwasakii 。右巻きカタツムリの中身だけを引き抜いて食べるため、左右で歯の数が異なるという進化上興味深い蛇でもある。

「 小さな飛翔 」

リュウキュウウラボシシジミ

Photo:©Takehiko Sato

沢沿いをチラチラと舞うリュウキュウウラボシシジミPithecops corvus ryukyuensis 。白黒のコントラストが印象的な蜆蝶だ。国内では西表島と沖縄島でのみ見られる日本固有亜種。

「 茂みの中の瞳 」

ズグロミゾゴイ

Photo:©Takehiko Sato

ズグロミゾゴイGorsachius melanolophus の幼鳥が足を引きずっていた。どうやら飛べないようだったが、その瞳はどこか強気にも感じられた。翌日様子を見に行くと、移動したのか、はたまたイリオモテヤマネコに襲われたのか、すでにその姿は消えていた。

「 青空の下の夜の住人 」

オオトモエ

Photo:©Takehiko Sato

昼間の森で隠れているのはオオトモエErebus ephesperis 。独特の模様を纏った手の平ほどの蛾で、人の気配を感じると突然茂みから飛び出し驚かされる。夜の住人ではあるが、意外にも青空が似合っていた。

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佐藤岳彦

佐藤岳彦(さとうたけひこ)

仙台市出身。生物多様性の織り成す世界に魅せられ、大学院で生物学を学びながら、写真を撮りつづけている。日本各地や海外を旅し、生き物を追いかけ、見つめ、その表現を常に模索している。