コンサベーションandキッズ
2009.10.11
project「ここにいるよ」は、都市の公園や緑地に生息する生きものたちの存在や、奥深さ、おもしろさ、他の生きものとのつながりを、どうやったら公園に訪れた人たちに楽しく伝えられるかを考え、実践する学生の集まりです。
初めての実践として、国営昭和記念公園の「子どもの森」内でQRコードとケータイWebを用いた、生きもの巡りのオリエンテーリングイベントを行いました。

QRコードの掲載された標識
Photo:© 「ここにいるよ」

イベントのポスター。事前の参加申し込みも不要
Photo:© 「ここにいるよ」
生きものといえば、動物園や植物園などにいる珍しいものや、テレビなどで紹介される可愛らしいもの、格好いいものが注目を浴びます。そんな生きものたちに比べれば、都市公園に住んでいる生きものたちは地味かもしれないですし、時にはやっかいものだったりします。でも、彼らは私たちがあまり気づかないところで独自の生活を送りながらも、生態系という相互関係の中で、他の生きものや私たち人間とつながっています。
私たちのプロジェクトでは、そんな都市公園などに暮らしている生きものたちの存在・生活や、生態系での他生物や人間との関わりを紹介したいと考えています。自分の身の回りの生きものたちを知ることで、自分の住んでいる場所や地域をより奥深いものとして感じてほしいです。また、常日頃から生きものたちと人間との関係を気にかける姿勢を持ってもらいたいと思います。そうすることが、現在人類が直面している生態系の危機を解決するための、第一歩になるのではないかと考えています。

生きものたちにふさわしくない環境に、「ダミー」の標識が設置されていることも Photo:© 「ここにいるよ」
生きものたちの紹介をするには、書籍やインターネットなどのメディアといった伝達方法と、観察会などの野外での手法があります。私たちが提案する手法は、これらの中間に位置するものです。
公園内の生きものの生息地点や、生きものに必要な環境に、それを示す標識を設置します。その標識にはQRコードが掲載されていて、QRコードからケータイでWebにアクセスすることで、その標識対象種の詳細や、生態系での他生物との関わりについての情報が得られます。これが私たちの手法の現段階での基本形です。野外・現地で、実際に生きものを見ながら、図鑑がなくても専門家がいなくても、手軽に生きものについて知ることができます。

ネコジャラシには、どんな生きものが依存しているかを示す「ずかん画像」 Photo:©「ここにいるよ」
9月には、この手法の課題を見出すのを目的に、東京都立川市にある国営昭和記念公園の「子どもの森」内で、標識を回るオリエンテーリングゲームイベントを開催しました。イベントタイトルは、「ケータイで どうぶつオリエンテーリング!!」。都内近郊に生息しているスズメとタヌキの食べ物となる植物の生息地点や、依存しうる環境に標識を設置し、スズメコースとタヌキコースを設定の上、親子を主な対象としてオリエンテーリングをしてもらいました。
スズメコースで標識を設置したのは、スズメが食べるスズメノヒエ、オオバコ、エノコログサなどです。標識を見つけ、QRコードをケータイで読み取るとWebに接続され、標識対象種に関する情報を見ることができます。
この情報に対するリアクションを、「ふーん...」もしくは「そうなんだ♪」のうちから参加者が選択することで、即時その場の参加者の反応をアクセス解析やカウンターで知ることができます。
リアクションを選択後は、「ずかん画像」というものが見られます。「ずかん画像」には、対象種に依存している生きものたちのグラフィックや説明などが記載されていて、ケータイに保存することでイベント後も持ち運びできます。公園や緑地、家の周りなどで生きものを見つけたときに参考にできます。
この「ずかん画像」に書かれた情報を見ると、受付で配るクイズの答えが見られ、標識をすべて見つけ、すべての答えに回答すればゲームクリアとなります。
タヌキコースでは、ドングリを落とすコナラや、ギンナを落とすイチョウ、隠れ場所として利用しうる笹群生地点などに標識を設置しました。

Webで見られる挿絵(スズメコース)
Photo:© 「ここにいるよ」

Webで見られる挿絵(タヌキコース)Photo:© 「ここにいるよ」
実際にイベントを行い、アンケートを取ることなどで様々な課題を見つけることができました。

イベント当日の様子 Photo:© 「ここにいるよ」
一番大きな課題は、実物に注目したり、触れてみたりする機会をあまり作り出せなかったことです。オリエンテーリングというゲーム性も相まって、子どもたちが標識を探すことだけに夢中になってしまったり、Webの情報だけに集中してしまい、実物をあまり見ていないといった状況が多々見られました。これでは、野外で情報を提供する意味がありません。Web上の文字で、「ほらほら、見て見て!」「何かニオイがするよ!」など、実物を見てもらえるような仕掛けがなかったわけではないですが、あまり効果はなかったようです。「情報を見る→実物をよく観察する、触れる」ではなく、「実物をよく観察する、触れる→情報が見られる」といったように、身体性をより重視する手法にする方が、より質の高い生きもの体験につながると思います。
また、そのためには参加者自身が情報の発信者になることも大事だと考えます。自発的に観察し、触れてもらうには、運営側から一方的に情報提供するのではなく、参加者同士が情報を相互に発信する機会を設けることで、より情報を自らの力で得ようというモチベーションにつながるのではないでしょうか。これが、リピーターを獲得するきっかけにもなるでしょうし、Web情報は季節ごとに更新もできるので、季節変化を楽しんでもらえる企画への発展も見込めます。
本プロジェクトは、都市公園などに常設して、自然離れが最も著しい10代後半から20代の人に向けた企画を最終目的にしています。今後は、上述の課題に留意した企画を様々な場所で実行し、より質の高いものを目指して行きます。
Written by 慶應義塾大学環境情報学部3年 一ノ瀬友博研究会所属 プロジェクト代表 荻本央