コンサベーショニスト
2010.01.08
パラグアイ生まれ、ブラジル育ち。合気道をきっかけとした来日から三宅島に「はまり」、三宅島でカヤックのインストラクターやドルフィンツアーのガイドをされてきたカルロス・バルボサさん。そんなカルロスさんへ、「三宅島の魅力」や「人と自然とのつきあい方」をテーマにお話を伺いました。
カルロスさんが運営なさっているクライミングジム、Teco Caveにいらっしゃっていた皆さんとカルロスさん(中央)
そもそも海が好きになったきっかけが何かあったのでしょうか。
ブラジルでは0歳から海に入ってるから...もう好きにならない方法はなかったです。入らないと殺されると思います、私の家では。「何やってんですか、苗字変えなさい」みたいに(笑)。
それから16歳のとき、初めてスキューバダイビングをしました。海に潜った瞬間、「あぁ、水中はアットホームだな」と思いました。水中は静かに海の音を聴くことができ、またかなり綺麗な環境でもあったので楽しかったです。
一番最初に三宅島に来た理由を教えて下さい。
22歳で最初に来日したのは、合気道を勉強するためでした。南米でずっと合気道をやっていたのですが、もうブラジルで私の先生は教えることがなくなってしまうくらい上達しちゃったので(笑)。たまたま私の1番好きだった先生の流派が三宅島にあり、後に私も合気道の先生になりました。
合気道の指導の間はやはり海ばかりで、三宅島のことがだんだん好きになっていきました。毎日アウトドアに住んでいると、潮も風も強いし雨も降るときは土砂降りとか、台風のときは津波で間違いないとか(笑)。そこが素晴らしくて勉強したくなり、(2000年の三宅島の噴火を機に)1度カリフォルニア大学で海洋工学を専攻しました。しかし潮の流れなど海の全体的なことはまだ未研究で不思議な部分が多く、先生も「向こう(三宅)に帰ったほうがいいよ」って。だからやっぱりそういうことを味わいたいんだったら現場にいないといけないな、と思いました。専攻後、海洋工学の仕事の関係もあり、また三宅島に戻りました。
では、ブラジルでも海は身近だったと思いますが、それでも三宅島にはまったのはそういう潮の流れや海の全体的な部分が、特に魅力的だったのですね。
海の激しさっていうのかな。波が高くて風が強くて、今日入ったところは明日全く違うんです。ブラジルだったら大体流れがわかりますが、三宅島では3日同じ海はありえないです。噴火してるのも言葉で説明できないけど「生きてた」。私もそこにいると「生きてた」。自由さをすごく感じたんです。
(滞在していくうちに)イルカは魚のように卵を何百個つくってたくさん産むわけじゃないから、イルカを食べていることも気になり始めました。そういうことを島の人と闘うんじゃなくて何か教えられればいいんじゃないかと思って、漁師さんにツアーをやろうと思いました。
2002年にガイドを始めたきっかけは、一般の人というより漁師の方に対する働きかけだったのですね。
そうですね、エコツーリズムをもっと日本に知ってほしかったです。当時一番私が困っていたのは、「漁師さんが仕事しないと食べられない」こと。だけど漁も悪いわけではなくて、違う方向でアプローチしたかったんです。例えば時期に関して、魚を夏に釣りに行くのはあんまり良くないですよね、本当は魚がほとんどいないから。
それで会社のバックアップもあり、ドルフィンツアーを毎年100日以上やっていました。結果島にお金も入って来たし、漁師さんも漁ができなくても良い、イルカも守れる。ビジネスで皆も環境を守ってくれれば、良いアイディアだな、と思いました。
ガイドとして嬉しかったのは、やはりそのように漁師の方の認識が変わってきたことだったのでしょうか。
徐々にイルカのペンダントをつけたりとか(笑)かなり漁師の方と仲良くなって、良かったです。ガイドとしてもお客さんが喜んで下さったので、私たちのスタイルが合ってたんじゃないかと思います。
逆にガイドをやっていて気になったことや悲しかったことはありましたか。
あります。最初のころ私たちには何もルールがなくて、何もわからない状態でイルカウォッチングをやってたんですよね。で、船に40人も乗せてて、その40人もイルカ見るときにわーっととんで、海でわーと追いかけて...これはあんまり良くないなと。だけど今は(船員の)グループは13人になりました。また、船にガイドをつけるのもルールになりました。 あとは、税金に関して、橋やアスファルトをつくったりとか、全然必要のないところにお金を使ってたんですよ。その代わりにもうちょっとゴミの管理とかマナーなど、観光客がきてもわからないことがないように厳しく案内してほしかったです。私たちもイルカのことを昼と夜に1回ずつスライドショーでレクチャーしてたんだけど。それも結局イルカにしか(注意が)向かないから。「イルカだけじゃないですよ。イルカがここにいるのは、この石、この魚、この潮があるからだよ」っていうのを教えたかったです。
先ほど三宅の魅力について「自由さ」や「激しさ」とおっしゃっていましたが、ガイドとして案内するときには(そういった魅力を)どのように勧めていらっしゃいますか。
私たちがよくやったのは海と森(両方)、ということです。イルカに会って温泉入ってご飯食べて...普通は終わりなのですが、私たちはあとレクチャーやナイトハイキングもしました。観光客にとっては島=海でしかなかったけど、でもそんなことないですってことで。海も楽しいけど森もあるから、ちょっと体験してみましょう、っていう感じになりました。
最初「えー、森行くの!?」といったような反発はありませんでしたか。
「(森は)ありえない」と言われました。ですが(通常より盛りだくさんのプログラムを経験していくと)皆できないできない、ハードって言ってから、「あぁ、全部関係ある。海があるためには空も関係あるし風も葉っぱもあるんだ」と、だんだん考え方がワイドになってきました。だから私が1番三宅で感じてほしかったことは、まず自由さ(信号がない渋滞もない、だから動きやすいところ)と、すべては関係あることで、だからすべてがまとまると幸せになれるんだと思います。
具体的にナイトハイキングはどのように案内されるのですか。
ただ何かをやればいい、っていうことはないと思うんだけど、まず空を見てもらうことがあります。あと、温泉も出てたりするので、そこは40度とか80度になったりとか。岩の間に手をいれてもらうとヤケドするぐらいです。私にとってはレッスンタイムみたいな感じで、「どうですか、環境は」と聞くと、「やっぱり空がきれいなんですよー」と返ってきたりして。だから私にとっては色んな話ができて、エコツーリズムを紹介できるところでした。
Teco Caveにいらっしゃっていた皆さんで
最後に何かメッセージがあればお願いします。
何か覚えるためには色んな方法があると思います。本読んだりレクチャー受けたりとか。だけど自分の肌で感じるのが、現場に行くのが、結局一番勉強になるんじゃないかな。子どもも自転車に乗るときは経験が必要ですよね。日本に来た時には色々覚えるんだな、と思っていたけど、次第に日本が覚えなきゃいけない部分もたくさんあると思いました。その一つが楽しむ・遊ぶ方法かな。日本はみんな「都会が」「ビルが多い」って言うけど森も海もたくさんありますよね。それに(日本人の)「行けない」「遠い」っていうのは、ブラジルと比較すると普通だし当たり前ですよ。「時間がない」とかよく聞くけどそれも人のせい。だからやっぱり経験をしてほしかったんです。日本に足りなかったのはアウトドアに行く時間・外に太陽浴びてビタミンDをもらう時間かなと思います。
もう一つは、結果として今(ツアーに)行ってる人たちがこれから環境を守ってほしい。守ってほしいというか、更にきれいにしてほしい。(ネットワークを)でっかく一つつくるよりは、小っちゃく少しずつ、色んなところにやればいいんじゃないかなと思います。
編集後記:
記事執筆者が初めてのインタビューになかなか慣れず緊張していた中。言葉をかみくだきながら、時に例え話やジョークを交えながら、本当に「丁寧」に話して下さったカルロスさんの姿が印象的でした。将来は三宅島以外でもエコツーリズムをやりたいとおっしゃるカルロスさんの、今後のご活躍をお祈り申し上げます。インタビューにご協力いただいたカルロスさん、Teco Caveにいらっしゃっていた皆さん、本当にありがとうございました。