保全の現場から
2009.04.22
埋め立て工事進行中、沖縄市泡瀬干潟 Photo:©Masakuni Yamashiro
ゴカイは地球を救うか
普通の人なら気味が悪いと思うような生き物を、干潟の泥の中で探しあてては喜ぶのが私たちの仲間です。
2000年夏、急逝された山下弘文さん(諫早市、初代JAWAN代表でゴールドマン環境賞受賞者)はその一人で、時間があれば干潟に出て調査をされていました。ゴカイやカイ、カニの類が渡り鳥の餌になるのは知られていますが、干潟の浄化にも役立っています。泥の中の有機物を食べ、きれいにして戻してくれます。
山下さんは「干潟を守る運動をするのはおいしい魚を食べたいからで、特にムツゴロウの蒲焼はうまい。」とゆでダコのような赤い顔をして私たちを煙に巻いたものです。湾が締め切られた(1997年4月)直後、全国から人が集まり、「ムツゴロウ救出作戦」などが実施されたりした頃のことです。ヘナタリやシチメンソウなどがかわいそうだと思う人はあまりいなかったようです、これらの貴重な干潟の生物も消えてしまいました。
諫早湾には新種もまだまだたくさん埋もれていたそうで、これらは潮受け堤防の水門を開けて潮流を呼び戻し、干潟を再生させたら戻ってくるということです。水門を開けるのは早いほうが良いに決まっています。
外からは、汚い泥にしか見えない干潟、でも実はたくさんの生き物がお互いに関係しながら生きています。魚や貝類などが産まれ育つ場所であり、海産物の宝庫です。
韓国順天(スンチョン)湾の干潟 Photo:©Ramsar Network Japan
ラムサール条約の決議 IX.14「湿地と貧困削減」(2005年第9回締約国会議 於ウガンダ)を見たとたん、「あ、諫早のことだ」「先住民とは地域の人だ」と思いました。湾が締め切られて干潟がなくなり、その影響で魚が捕れなくなってたくさんの漁師さんが自殺し、魚料理の店は寂れ、造船の仕事もなくなってしまった諫早を見てきたあとだったからです。
この決議は発展途上国に関するものだとされていますが、私の解釈は異なります。先進国であっても、湿地が埋立てなどで劣化してしまい、地域の人々の生活が成り立たなくなった例がたくさんあるからで、決して遠い国のことではないと思っています。
持続可能性を計る物差のひとつ、「湿地(自然)の社会経済的評価」の普及が待ち望まれます。 この物差を使えば、特に政策立案者や企業が、どちらがより持続可能か考えることが出来るからです。
余談ですが、昨年の10月、韓国のチャンウォン市で開催されたラムサール条約COP10の歓迎夕食会では「タコのアシの刺身」が出ました。切られたあとも活発に動いていて、白いゴカイの群れのようでした。口にするには勇気が要りますが、とってもおいしいらしいです。韓国の干潟はどこまでも広大で、鳥の種や数も多いし、海産物も豊富です。訪問するたびに山の幸・海の幸に恵まれた豊かな国だなと実感します。
「Healthy Wetlands, Healthy People」をテーマとするCOP10の開催国、韓国のNGOともネットワークして、持続不可能な開発に替わる「賢明な利用」をすすめていくことにしています。
Written by 伊藤吉野(ラムサール・ネットワーク日本/CBD市民ネットワーク)