食と生物多様性
2009.05.07
Photo:©Ai Ohara
あなたにこんな質問をしたら、きっと答えは「はい、もちろん!」でしょう。
ご存知のようにハチミツは、子供からお年寄りまで多くの人に親しまれ、世界中で愛用されている天然素材です。その用途は食品から薬、美容品まで様々です。しかし、世界中で愛されているはずのハチミツは、一方で少々偏った愛され方をしているようにも感じます。皆さんはどう思いますか?
その偏りというのは、こんな質問をしてみることで明らかになります。 例えば、こうです。
「ハチミツは好きですか?」
「ミツバチは好きですか?」
はたして、この2つの質問に同じ答えは返ってくるでしょうか?
きっと前者の質問には「好き」とか「おいしいから大好き」とか好意的な答えが多く、後者の質問には「怖い」とか「刺されたから嫌い」といった負の答えが返ってくるのではないでしょうか? (勿論、国や地域によってはこの質問と答えの関係は全く違う結果をもたらすでしょう)
これはミツバチのことを知らないが故に生まれる「偏見」といえるかも知れません。しかし、私たちの生活はミツバチととても密接な関わりを持っています。そして、私たちの暮らしはミツバチから実に多くの恩恵を受けているのです。
「BEE with US」では、ミツバチを通じて見えてくる「食と生命の営み」についてのお話をご紹介していきます。
Photo:©Ai Ohara
「ミツバチがくる」=「花がある」ということになるわけですが、蜜があれば何の花でも良いという訳ではありません。昆虫と花には、構造や色によって相性があるのをご存知でしょうか?
ミツバチの色感覚は黄・緑・青・紫。このことは蜜を集める花とも関わりがあります。イチゴ、サクランボ、ミカン、ラベンダー、オクラ、ナス、トマト、ゴーヤ、カボチャ・・・どれもミツバチの色感覚に合う色の花を咲かせるので、自然とミツバチが集まります。そして、互いのパートナーシップにより、ミツバチは蜜や花粉を採取します。
植物は、いわばその対価として受粉をしてもらい、結実に至るのです。昆虫と花の間にはパートナーとして適した組み合わせが存在し、協力関係が成り立っています。言い方を変えれば、長い時間をかけて形成された「互いに生き抜いていく為の個性」とも言えるでしょう。
Photo:©Ai Ohara
ミツバチは有毒な化学物質や放射性物質に敏感です。生息地に対する感受性はとても高く、農薬の散布や核実験の存在までも鋭敏に反応します。また、社会を形成してコミュニケーションを取り合い、助け合って生きる高度な社会性を持っています。しかし、生きるための感受性が強いこの昆虫に今いくつかの問題が降り掛かっているのです。
現在「蜂群崩壊症候群 Colony Collapse Disorder」が世界中で問題となっています。これは一夜にしてミツバチが原因不明に大量失踪する現象です。
人間にとっては原因不明と言われますが、農薬、遺伝子組み換え農作物、ミツバチの貸し出しや輸出入、気候変動などの原因から、ミツバチに免疫機能不全、帰巣本能喪失等の影響がみられるといいます。
そして今、日本国内で問題視されているのが、数年前から普及しはじめている"ネオニコチノイド系殺虫剤"という農薬です。これまでの有機燐系殺虫剤より人体への直接的影響が1/3以下といわれ、低農薬・減農薬地域で散布されている新しい農薬です。主に除草剤などに使われるこの農薬の特徴は、特定種類の生物だけに毒性を発揮し、他には無害あるいは低毒性であるという点です。
ところがこの新薬は、昆虫の知覚神経を麻痺させてしまうので、ミツバチにとっては致命的。コミュニケーションをはじめ、社会生活に必要なあらゆる能力を失うとともに帰巣本能までも失ってしまいます。
ミツバチは忽然と大量失踪したのではなく、巣に帰ることができずにバラバラな場所で死滅していった可能性が高いのです。
自然の摂理に合致したミツバチの営みは様々な生きものに有用な影響を与えてくれます。それによって、私たちの毎日がどれだけ楽しく、安全で、健やかに保たれているかをもっと知る必要があるとは思いませんか?
どんな生き物にも「役まわり」があります。それを理解していくことは、私たち自身の生きるために必要な感受性を高めることにも繋がるのです。
Written by Ai Ohara(Watash Project)