香坂玲/生物多様性-できるビジネスパーソンは知っている
2010.05.14
Photo:©CI/Brian Skerry
前回もとりあげたGBO3(地球規模生物多様性概況の第三版)が、5月10日に全世界で公表された。同報告書では、とりかえしのつかない変化となる"臨界点"が近づいている生態系があるのではないか、という指摘がされている。
日本にとっても関心の深いテーマである水産資源の枯渇が、テーマとして提示されている。ワシントン条約のマグロの議論でもおなじみであるが、特に上位の捕食者の減少が目立つと指摘されている(逆にイワシなどの下位の魚であれば、不足感はない)。水産資源に関しては、「科学的な不確実性が高い」というのは、執筆者の科学者も認めるところであるが、テーマとして議論され始めていることは事実だ。いままで、国連内でも委員会や国際連合食糧農業機関(FAO)での資源管理の観点から議論が行なわれてきた。さらに、生物多様性という観点から、COP10でも議論される可能性が濃厚となってきた。
沿岸・海洋域は、COP10で集中的に議論が行なわれる課題のひとつとなっている。そもそも生物多様性条約で水産資源の規制等を話し合うのが適したフォーラムであるのか議論を呼ぶところではあるが、恐らく生物多様性への影響という観点から「非持続可能な漁業」という言葉などで、本会議でも、あるいはより過激な言葉で非政府組織も問題提示をしてくる可能性が高い。
統計によってばらつきがあるが、水産資源の多くを輸入する日本に対する世界の厳しい視線を受けながら、健全な議論のための準備を進めておくことは重要だ。今後の半年弱で、国際的な対処を考えていく必要がある。
欧州委員会などが支援する研究成果等においても、受粉、化学物質、気候変動と生物多様性の損失などが研究されているが、中心となるドイツの研究者が、水産資源の規制も一つの政策的対応とする論文を発表している。
日本でも政権交代が実現し、官邸主導のスタイルへと変革するのか注目されている。欧州では、政府代表団に、専門的知識を持つ非政府組織スタッフが暫定的に入るケースが目立つ。歴史や専門性の違いから単純な比較はできないが、日本でも政府代表として発言するのが、官僚と外郭団体だけではなく、裾野を広げる議論を始めてみるのも手である。環境NGOと連携して政策を進める議連なども誕生している。また、COP10に向けて、省庁横断的なテーマに対応に、どこまで利害関係者と関連する省庁との意見交換が深められるかが焦点となりそうだ。
静岡県生まれ。東京大学農学部卒業。ハンガリーの中東欧地域環境センター勤務後、英国で修士、ドイツ・フライブルク大学の環境森林学部で博士号取得。2006年からカナダ・モントリオールの国連環境計画生物多様性条約事務局の勤務を経て、4月より現職の名古屋市立大学大学院経済学研究科の准教授(林業経済、環境政策論)。COP10支援実行委員会アドバイザー。国連大学高等研究所客員研究員を兼務し、里山の評価などに参画。