香坂玲/生物多様性-できるビジネスパーソンは知っている

地球規模生物多様性概況第三版(GBO3)の議論

2010.03.25

Photo:©CI/Robin Moore

生物多様性条約では、地球規模での生態系を含む生物多様性の動向を、4年に一度公表してきた。地球の生物多様性「白書」という位置づけだ。2006年に公開された第二版は、15ある指標のうち、明確な改善を示す指標が保護地域の指定面積の一指標しかなく、生物多様性の保全や持続可能な利用で多くの課題が残されていることを示した。

さて、その地球規模生物多様性概況の第三版(GBO3)の原案が5月の科学的な会合で明らかになる。現在の原案はあくまで非公式という扱いであるが、2010年の名古屋で開催が予定されている第10回締約国会議に直結する内容なだけに、各団体、各国の関心も高い。

まず、全体で各国が合意に至るかどうか注目されるのは、同報告書で、再生が困難で、悪化が加速的に進みかねない特定の生態系に対して、迅速な対応を呼びかけていくことができるかどうかだ。「アマゾンを守らなければならない」というのは一見分かりやすい主張だが、特定の国と地域だけが保全の努力を求められる結果になりかねず、地元からは反発と資金や技術での協力の要求がでてくる。

もともと生物多様性条約は、経済的に発展した先進国と、経済的には発展途上だが生物多様性の多くを国内に抱える発展途上国という構図で、いわゆる南北問題が出て話し合いが難航してしまうケースもある。2010年の会合は、フェアでお互いが納得のいく遺伝資源の利用について国際制度を話し合う節目の会合なだけに、両者の主張が折り合えるのか注目される。

香坂玲

香坂玲(こうさかりょう)

静岡県生まれ。東京大学農学部卒業。ハンガリーの中東欧地域環境センター勤務後、英国で修士、ドイツ・フライブルク大学の環境森林学部で博士号取得。2006年からカナダ・モントリオールの国連環境計画生物多様性条約事務局の勤務を経て、4月より現職の名古屋市立大学大学院経済学研究科の准教授(林業経済、環境政策論)。COP10支援実行委員会アドバイザー。国連大学高等研究所客員研究員を兼務し、里山の評価などに参画。