草刈秀紀/条約と法律と現場から

生物多様性条約を知る前に!

2009.04.22

生物多様性条約

Photo:©Hidenori Kusakari

条約とは、文書による国家間の権利や義務の約束を明記したものです。

そして、条約とは、国際法上で、国家間で結ばれる成文法のことを差します。「日本国においては、国家が同意しているものは、国事行為として天皇が公布し日本国内では法律より優先する(憲法第98条2項による。ただし憲法には劣る)」としています。
つまり、法解釈上は、日本国憲法の次に優先されるのが、条約になります。日本は、様々な条約を批准していますが、基本的に、個別法の上位にくるのが条約なのです。

さて、条約を批准する為には、上位に来た条約の趣旨や内容を遂行する為に、国内の法制度を整える必要があります。
では、日本が生物多様性条約を批准した時の国内法は、何でしょうか?
2006年6月9日に、参議院の谷博之議員が国会質疑と同様の効力のある質問趣意書を出しました。鳥獣保護行政に関する質問主意書には、次のように書かれています。

この質問趣意書に対する答えとして、答弁書が返されます。
「生物の多様性に関する条約(平成5年条約第9号)が定める国内措置としては、平成5年5月に我が国が同条約を締結した時点においては、鳥獣保護及狩猟ニ関スル法律(大正7年法律第32号)、自然公園法(昭和32年法律第161号)、自然環境保全法(昭和47年法律第85号)、絶滅のおそれのある野生動植物の種の保存に関する法律(平成4年法律第75号)等に基づく措置が講じられており、その後、遺伝子組換え生物等の使用等の規制による生物の多様性の確保に関する法律(平成15年法律第97号)、特定外来生物による生態系等に係る被害の防止に関する法律(平成16年法律第78号)等に基づく措置が講じられている。」

「9について掲げた法律は、その目的がいずれも生物の多様性に関する条約の理念に沿うものであり、これらの法律を的確に運用することで条約に基づく義務を十分に履行することができるものと考えている。」

皆さん、政府の回答を読んでどう思われましたか? 本当に、日本の生物多様性は、この国内法で保全されているのでしょうか? そして、この国内法だけで十分でしょうか?

2003年、多くの44の市民団体が参加した「野生生物保護法制定をめざす全国ネットワーク(現在は、解散しています)」が国会議員を通じて「野生生物保護基本法(案)」を作りました。

2008年6月6日に「生物多様性基本法」が公布・施行されました。
この基本法は、「野生生物保護基本法(案)」をベースにして、議員立法として作られたものなのです。市民立法として作られた基本法なのです。また、ネジレ国会と言われていますが、採決では、衆議院、参議院の全ての国会議員が賛成しました。この基本法の位置づけは、下図のようになっています。様々な生物多様性を保全する活動に参考になる条項が沢山盛り込まれていますのでご一読下されば幸いです。

日本の環境法体系

Image:©Hidenori Kusakari


草刈秀紀

草刈秀紀(くさかりひでのり)

(財)世界自然保護基金ジャパン自然保護室次長。日本大学農獣医学部拓殖学科卒。(財)日本自然保護協会の嘱託職員等を経て、1986年、WWFジャパン入局。愛知万博検討会議委員、千葉県ちば環境再生基金助成部会委員、東京都東久留米市環境基本条例検討会委員、京都府絶滅の恐れのある野生生物の保全制度に関する研究会委員、野生生物保護学会理事等多数歴任。G8サミットNGOフォーラム環境ユニット生物多様性イシューリーダー。自然保護を巡る論考等多数。